2017/09/06

デフリンピックに関する小池知事の不思議発言報道についてのメモ

小池都知事はパラリンピックの内容を理解していないのではないか?ってお話 - 世界はことばでできている

デフリンピック(聴覚障害者のスポーツ世界大会)とパラリンピックは全くの別物で、パラリンピックに聴覚障害部門は無く、2020年東京大会にデフリンピックメダリストが参加することは無いのだが小池東京都知事はそれを知らないのではないか、また記事を書いた読売新聞も都知事と同じ勘違いをしているのではないかというお話。

上記ブログでは読売新聞にこの件を連絡し、都知事の「3年後の東京でメダルにつながることを期待している」という趣旨の発言が間違い無くあったと回答を得たとのこと。また記者の方もデフリンピックについてやはりよく理解してない様子だったらしい。

なかなか興味深いと言っちゃ悪いが、他社の報じ方はどうなのかとか気になってきたのでちょっと調べてみた。


デフリンピック - Wikipedia

まず基本情報。 パラリンピックの前身が1960年初開催なのに対し、デフリンピックは1924年とずっと歴史が古い。オリ・パラと同じくデフリンピックも夏季冬季それぞれ4年に1度なのだが、年も開催地もオリ・パラには合わせていない。今年2017年トルコのサムスンで開催された次の夏季大会は2021年で、場所は未定である。(冬季は2019年。ウィキペディアには開催地がトリノと書いてあるが、公式HPではまだ未定とされていてソース不明。)

というわけで、デフリンピアンに「3年後の東京でメダルにつながることを期待している」と激励したことが事実ならば、都知事がパラリンピックとデフリンピックを混同している可能性が非常に高いし、何の突っ込みもなく発言をそのまま載せてしまった読売新聞も読者に誤解を与えている。

対する競泳・藤原慧選手の「2020年東京大会に向けていい弾みがついた」という返答も何だか変な感じである。都知事はまだしもまさか選手自身が勘違いしているとは思えないが…。


デフリンピック 東京都ゆかりのメダリストを表彰 | NHKニュース

こちらは天下のNHK。読売と比べると内容がやや詳しい。知事のコメントは「障害を抱えながら世界で戦う皆さんを誇りに思っています。応援しているので、さらに頑張ってほしい」と問題の部分はスルーされている。これはさすがの英断なのかたまたまなのか。

藤原選手のコメントはこちらは「3年後の東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて貢献したい」となっていて、読売と微妙に違う。両者が同一の発言なのかは分からないが、これならスポーツ界全般を盛り上げたいとの趣旨として納得できる。読売の「弾みがついた」というのも、そんなような意味に取れなくもない。まあそれを言ったら都知事の「東京でメダルにつながることを期待」もそういう意味として好意的解釈も不可能ではないが。


聴覚障害者の大会デフリンピック12選手 メダリストに都民スポーツ大賞:東京新聞(TOKYO Web)

東京新聞。こちらは東京大会云々の話は無く、全く無難な記事である。


デフリンピック金に都栄誉賞 - 産経ニュース

代表で手話を交えながら謝意を述べた山田選手は「知名度が低いデフリンピックを全国の皆さんに知っていただけるように頑張りたい」と東京大会に向けて意欲を新たにした。

おいおいこれは。都知事発言は回避できたのに、選手コメントに「東京大会に向けて意欲」と余計な一言。都知事と読売のみならず、産経新聞の記者もどうやら同じ勘違いをしているようだ。これではデフリンピックの知名度向上を願った山田選手のコメントもむなしい。


第23回夏季デフリンピック大会メダリスト表彰式を開催|東京都

都のHPにはまだ表彰式をこれからやりますという告知までしか載っていない。ここにはデフリンピックについての丁寧な説明のページもあり、中の人は(当たり前だが)ちゃんと分かっている感じがする。

今後ここでどういうプレスリリースが出るか、続報あり次第更新するという冒頭ブログ記事と合わせて期待しておきたい。
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2017/06/12

トランプのコミー批判ツイートの和訳が報道各社揺れている件

気になったのでメモ。

いわゆる「ロシアゲート」疑惑に関連して、トランプ大統領から圧力を受けたと証言したコミーFBI前長官に対し、トランプ大統領が以下のように批判ツイートをしている。


「Despite so many false statements and lies, total and complete vindication...and WOW, Comey is a leaker!」

140文字という制限のため色々と言葉が省略がされているこの英文を、報道各社はどう訳しているか。


まずはNHK。
FBI前長官の証言に大統領側が強く反論 問題尾を引くか | NHKニュース

(前略)「数多くの虚偽の陳述やうそにもかかわらず、全面的、かつ完全に潔白が証明された」として疑惑は晴れたと主張しました。さらに、「コミー氏は情報漏えい者だ!」とも書き込み(以下略)

「コミーにある事ない事を言われたが、結局は私の正しさが証明された」ということらしい。ふむふむ。


他のメディアも見てみよう。国際ネタに強そうなロイター通信。
コミーFBI前長官は「漏えい者」=トランプ米大統領がツイート | ロイター

(略)「多くの虚言と嘘にも関わらず、自らの正当性を主張した。コミーは漏えい者だ」とツイートした。

むむっ、ちょっと違うぞ。「コミーは嘘をついてまでコミー自身の正しさを証明しようとした」という意味になっている。


とはいえ多くのメディアは前者のNHKと同じ解釈をしている。時事通信。
ロシア疑惑、長期化強まる=前FBI長官証言で米トランプ政権:時事ドットコム

(略)ツイッターに「コミーが情報漏えい者だ!」と投稿。コミー氏在任中は大統領は捜査対象になっていなかったとの証言を念頭に「多くの誤った証言とうそにもかかわらず、(自分の)汚名は完全に晴れた」と主張した。

カッコ書きで補足してくれているので分かりやすい。


AFP通信。
FBI前長官証言にトランプ大統領が初ツイート「完全な立証」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

「多くの偽証やうそはさておき、(疑いを晴らす)全面的で完全な立証だ…そして、ワオ、コミーは情報漏えい者だ!」

「さておき」とか「ワオ」とか、なんか癖のある訳だけどこれも前者解釈。


毎日新聞。
米大統領:FBI前長官証言 自らの嫌疑晴れたとツイート - 毎日新聞

「多くの虚偽の告発やうそ」に関わらず、自らの「嫌疑が完全に晴らされた」と主張した。(略)コミー氏が、大統領との会話を記録したメモを知人を通じ報道機関に提供していたことに関して「コミーがリーカー(漏えい者)だったとは!」と書き込んだ。

「WOW」のくだりのニュアンスはこれが一番しっくりくる。「情報漏洩するような奴だったなんてびっくりしちゃうよね!(だからあんな奴信用できないよね!)」という揶揄のようだ。


他にCNNFNN(フジテレビ)西日本新聞が前者、つまり「私の正しさが証明された」の解釈。


一方後者側、ロイターと同じ「コミーが自身の正しさを証明しようとした」という解釈なのは日テレ。
トランプ大統領「作り話やウソばかり」|日テレNEWS24

「こんなに作り話やウソばかりなのに、自分は正当だと弁明してみせた」と記し、コミー氏をこき下ろした。

こっちの解釈をしたメディアはこの2社以外には無く少数派だが、どちらかがどちらかの訳を流用しているわけでもなさそう。


共同、産経、日経、TBS、テレ朝は現時点でこのツイートの関する記事は見つからなかった。読売は記事全文を読むのに有料会員登録が必要なので確認できない(日経も全文は有料だが検索は無料でできるので分かる)。


笑ったのは朝日新聞。記事後半の会員登録(無料)しないと読めない部分だが…。
「米大統領圧力」、激しい応酬 FBI前長官「捜査中止指示」証言 トランプ氏側、全面否定:朝日新聞デジタル

トランプ氏も9日早朝からツイッターで反撃を始め、コミー氏の証言を「事実に反する声明とウソばかりだ。そして、驚くことに、コミーは情報漏洩(ろうえい)者だ」と攻撃した。

肝心の部分をざっくり省き微妙な翻訳を回避。これはわざとなのか単に重要でないと判断して省略したのか…。


キーワードである「vindication」やその動詞形「vindicate」を軽く調べると、「汚名をすすぐ」「非難が不当であることを証明する」などトランプ側の無実証明という解釈にフィットしそうな訳もあれば、「正当化する」「弁明する」というコミーの強弁だという解釈に使える訳も出てくる。
vindicationの意味・用例|英辞郎 on the WEB:アルク
vindicateの意味・用例|英辞郎 on the WEB:アルク
vindicationの意味 - 英和辞典 Weblio辞書
vindicateの意味 - 英和辞典 Weblio辞書


英英辞典だと「批判や疑いを退け自分の正しさを示す」という感じで、「本当は違うのに自分が正しいと言い張る」のとはちょっとニュアンスが異なるような気がしなくもない。
vindication - definition of vindication in English | Oxford Dictionaries
Vindication | Definition of Vindication by Merriam-Webster


しかし、トランプ大統領の潔白が証明されたという意味だとすると、そんなのいつ証明されたっけ?という疑問も生じる…。





はい、ここからは答え合わせです。長々と書きながら調べてるうちにあっさり答えが分かってしまった。実はトランプ大統領のこのツイートは、顧問弁護士のカソウィッツ氏の会見と声明発表に続くものだった(会見は現地6月8日、ツイートは9日)。そしてその声明の中でまさに「vindicate」という言葉が使われている。
READ: Trump's lawyer's statement on Comey hearing - CNNPolitics.com

As he said yesterday, the President feels completely vindicated and is eager to continue moving forward with his agenda with this public cloud removed.
(昨日彼自身が言ったように、大統領は完全にvindicateされたと感じており、また世間の暗雲を取り除いて公約を引き続き前進させたいと願っている)

意味的にも文法的にもvindicateされたのは大統領だろう。NHKなどの多数派の解釈が正しくて、ロイターと日テレは間違いだったということになる。


どうやらコミー氏の証言でトランプ大統領が捜査対象になっていないことが明らかになり、だから潔白が証明されたのだと言いたいらしい。確かに捜査対象云々の話はコミー氏の証言の中にある。
コミー前FBI長官の証言要旨:時事ドットコム


しかしもちろん「今捜査されてないからといってそれは潔白の証明ではないだろ」という突っ込みは英語圏から既に入れられている。
Trump's fantasy of vindication in Russia probe - CNN.com


会見について日本語の報道はあまり多くなく、vindicateの部分の発言を直接訳した記事は無いようだ。全体の内容についてはNHKが詳しい。
トランプ大統領弁護士「捜査妨害の意図ないことが明らかに」 | NHKニュース


またトランプ大統領は、この会見の前まで柄にもなくTwitterでの発言を控えており、弁護士と相談し反論の言葉を慎重に選んでいたであろうことが覗える。vindicateやleakerなどの言葉遣いが弁護士と共通しているのは明らかに意図的だ。
CNN.co.jp : トランプ大統領、ツイッターで沈黙 記録的な長さに


結果的に誤訳だったとはいえ、ここまで背景を見ないと意味を確定できないのだからロイターと日テレには同情したい。トランプの英語なんて舐めてたがなかなか難しいものだ。
2017/06/10

「How Done It」

月刊『アンビグラム』」という企画に参加させていただくことになった。これからは基本的に月に1回お題に沿ったアンビグラムを制作します。とてもきつい。

ハウダニット

初回のお題は「ミステリー」ということで「How Done It(ハウダニット)」でやってみた。作ってから知ったがハウダニットの綴りはこうじゃないらしい。まあいいや。

月刊アンビグラム他の参加者作品はこちらから。
月刊『アンビグラム』2017-4月号